2022年9月26日、NASAは人類史上初となる「小惑星の軌道を意図的に変更する惑星防衛(プラネタリー・ディフェンス)実証実験」であるDART(Double Asteroid Redirection Test)ミッションを成功させました。
1. 標的天体:二重小惑星ディディモスとディモルフォス
主星ディディモス(直径780m)の周りを公転する衛星ディモルフォス(直径160m)が標的に選ばれました。二重小惑星系を選ぶことで、公転周期の変化を地球からの地上望遠鏡で極めて高い精度で測定できる利点があります。
2. キネティック・インパクター(運動エネルギー衝突)の物理
重さ約570kgのDART探査機が秒速6.6km(時速約23,760km)でディモルフォスに正面衝突しました。
衝突前の公転周期は11時間55分でしたが、衝突によって周期が**33分間も短縮(11時間22分)**し、NASAが当初目標としていた73秒を大幅に上回る大成功を収めました。
3. 放出物による運動量増幅効果(ベータ係数 $eta$)
衝突によって数千トンの岩石破片(エジェクタ)が衝突方向の逆向きに噴出しました。このロケット噴射のような反作用効果(運動量伝達効率 $eta pprox 3.6$)により、探査機単体の運動量をはるかに超える軌道変更力が小惑星に伝わったことが判明しました。